写真画像は撮影器材や表示機械の差によってかなり色が変わってしまい
特にクリーム色とホワイトなどの微妙な差はかなりあやしいです。
我が家のきれいな薄黄色をした花をデジカメで撮影し
HPにアップしたら、どうみても白にしか見えませんでした。
しかしながら土壌成分などの違いにより花色に変化が出る事は
ありえる事です。とくにローズピースのように微妙な色合いのものは・・・
何故かといえば薔薇という植物の色の発生の仕組みから語らなくてはなりません。
薔薇に限らず、花の色は花弁の細胞内物質の化学反応のよって発色します。
そしてその物質は、代表的な物を挙げると、フラボノイド、ベタレイン、
カロチノイド、クロロフィルの4種類があります。
これらが細胞内に単独又は複数で反応する事により様々な色彩を発現しているのです。
先ずフラボノイドですが、これは一種類の名前ではなく、
カルコン、フラボン、フラボノール、オーロン、アントシアニン等の色素の総称です。
最近ではガムなどで消臭成分に使われています。
多種のフラボノイドが自然界には存在していますが、
花の色に関わるのは先に挙げた数種です。
その中でもアントシアニンが幅広い色の発現に関わっています。
黄色、緑色以外のあらゆる色が出せます。
アントシアニンは糖と結びつくことで細胞内に安定して存在します。
そしてその結びつき方によっていくつものパターンに分れますが
大別すると6種に分けられます。
ペラルゴニジン、シアニジン、ペオニジン、デルフィニジン、
ペチュニジン、マルビジンです。名の由来は発見された植物名です。
ペラルゴニジンは橙赤色、シアニジンは赤色、ペオニジンは紫、
デルフィニジンは赤紫から青、ペチュニジン、マルビジンは青を示します。
実はこの6種の色の違いを出しているのは糖ではなく
水酸基(OH)とメトシル基(CH3)の配置と数の違いが色を創ります。
薔薇の色についての関わりは後述します。
アントシアニン以外に薔薇に関わっているフラボノイドはフラボノールです。
これは主に白やクリーム色の薔薇に含まれていますが、
それ自体は色がほとんどありません。
その色は白の場合は細胞内の空気に因る構造発色です、
クリーム色はカロチノイドとの兼ね合いで発色します。
カロチノイドはいわゆる人参色を出す色素です、
大別するとカロチン類とキサントフィル類の2種です。
カロチン類は炭化水素、キサントフィル類は酸素を含むカロチン誘導体です。
聞いた事のある名前ですが、カロチン類にはαカロチンやβカロチン、
キサントフィル類はルテイン、アゼキサンチン、
最近みかんから発見されて抗癌作用があると話題になった
βクリプトキサンチンが有名です。
薔薇では黄色から橙赤色までの発現に関わっています。
またアントシアニンとの共存で鮮やかな朱橙色の色が発現します。
クロロフィルは日本語では葉緑素のことです。
薔薇では蕾の頃に普通に存在しますが開花に伴い消えていきます。
そのまま消えずに残ると緑の花になります。
その際他の色素、アントシアニンやカロチノイドが発現しない事が前提です。
薔薇では珍しく、「ヴィリティフローラ」「緑光」「グリーンスリーブス」「
グリーンアイス」等数えるほどしかありません。
アントシアニンは薔薇では普通に存在しますが、
その中で青色だけが発現しません、先に挙げたペラルゴニジン、
シアニジン、ペオニジン、デルフィニジン、ペチュニジン、
マルビジンの内、デルフィニジン、ペチュニジン、マルビジンが存在しないからです。
アントシアニンは細胞内で酵素の働きにより分子構造が変化し、
その他の金属元素や物質と化合してペラルゴニジン等の色素を造りますが
デルフィニジン、ペチュニジン、マルビジンを誘導する酵素がないのです、
これは薔薇の遺伝子にその酵素の発現命令がないからですが、
つまり交配ではその色が出せないことを意味しています。突然変異でも難しいでしょう。
[2002年5月14日 8時59分42秒]